AIを活用したニュース記事ラベリングにより、分析作業を約1万時間削減
三菱UFJ信託銀行

この事例の要約
信託銀行の市場部門として投資判断に必要なネガティブニュース抽出課題についてAI導入が決定した
機械学習モデルによるネガティブニュース自動抽出で投資判断を効率化
「NEWS AI SEARCHER」の導入で年間1.1万時間削減と高精度な投資判断を実現

効率的な情報収集と分析の難しさ
三菱UFJ信託銀行の市場部門では、投資意思決定を行うために、日々大量のビジネス関連情報やニュースを収集し、分析する業務を行っていました。特に、投資判断に影響を及ぼす可能性のあるネガティブニュースの抽出と分析には、金融専門用語や特有の文脈を理解する必要があり、担当者の経験や知識に依存する部分が多く、業務負荷が高い状況にありました。また、情報収集の過程においては、様々な情報ソースから配信される膨大なニュースや報道の中から、投資判断に直接的に関わる重要な情報を効率的にピックアップすることが困難でした。こうした作業には多くの時間と労力がかかり、その結果として意思決定に遅延が生じたり、見落としが発生するリスクがありました。特に、ネガティブニュースの特定は、投資活動におけるリスク管理に直結するため、その精度とスピードが重要でした。このような業務課題を解決するため、三菱UFJ信託銀行はAI技術を活用したソリューションの導入を決定しました。
AIを活用したネガティブニュースラベリングシステム「NEWS AI SEARCHER」
この課題を解決するため、MILIZEは三菱UFJ信託銀行と共同でAIを活用したネガティブニュースラベリングシステム「NEWS AI SEARCHER」を開発しました。具体的には、膨大なビジネス関連情報の中から、ネガティブな影響を及ぼす可能性のあるニュースを効率的に抽出するために、機械学習モデルを活用しました。
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1. ニュースのスクリーニングと自動ラベリング
システムは、日々配信されるビジネス関連ニュースをスクリーニングし、ネガティブな影響を持つニュースを自動的に抽出します。特に注目されたのは、「投資・経済活動」に関する記事や、「アンチ・マネーロンダリング(AML)」、および「経済制裁」に関連する記事などです。AIモデルは、これらの記事を特定し、優先順位をつけてラベリングする機能を有しており、担当者が手作業で行っていたプロセスを自動化しました。
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2. 機械学習による精度向上
システムは、継続的に学習を重ね、予測精度を向上させます。これにより、従来の手作業に比べ、より高精度でネガティブなニュースを抽出できるようになります。特に、AMLや経済制裁に関連する重要なニュースが漏れなく抽出されるように設計されており、投資判断における重要な情報の見逃しを防ぎます。
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3. 専用WEB管理画面の活用
抽出されたネガティブニュースは、開発された専用のWEB管理画面に表示され、担当者がその内容を簡単に確認することができます。これにより、従来のニュース分析に必要な時間を大幅に削減し、情報の可視化と迅速な意思決定を可能にしました。
業務負荷の削減と意思決定のスピード向上
「NEWS AI SEARCHER」の導入により、三菱UFJ信託銀行では以下のような効果が得られました。
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1. 業務削減効果
導入前には、膨大なニュースを担当者が一つ一つ確認し、重要な情報を抽出するために多くの時間を要していました。AIシステムの導入により、このプロセスが自動化され、年間約1万1,000時間の業務削減効果が見込まれています。これにより、担当者はネガティブニュースの収集・分析にかかる時間を大幅に削減し、他の高付加価値業務に集中できるようになりました。
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2. 精度の向上
AIシステムの予測精度は非常に高く、再現率97.1%、適合率84.7%を達成しています。特に、AMLや経済制裁に関する記事は重要なリスク情報であり、その抽出漏れを防ぐことができるため、ビジネス活動におけるリスク管理が強化されました。これにより、投資判断における正確性が向上し、より適切な意思決定が可能になりました。
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3. 意思決定のスピード向上
担当者は、AIによって事前にラベリングされた重要なニュースを迅速に確認することができるため、意思決定のスピードが大幅に向上しました。従来の手作業での情報収集と比較して、情報把握の時間が短縮され、投資判断がより迅速に行えるようになりました。これにより、投資機会の逃しを防ぎ、競争優位性が向上しました。
システム導入による業務効率化と投資判断の質の向上
三菱UFJ信託銀行株式会社 市場デジタル推進部 橋本 育子氏:
MILIZE様のAI技術を活用した「NEWS AI SEARCHER」は、情報収集・分析業務を劇的に効率化しました。以前は、大量のニュース記事を手作業で確認し、重要な情報を探し出すのに多くの時間を費やしていましたが、今ではAIが自動でネガティブニュースを抽出し、優先順位をつけてくれるため、必要な情報を迅速に把握することができるようになりました。これにより、投資判断のスピードが向上し、より適切な意思決定ができるようになりました。また、AIが抽出したネガティブニュースの精度も非常に高く、従来の人力による分析よりも確実にリスク情報を捉えることができます。このシステムにより、今後はさらに高度な分析や予測にも活用し、より一層の業務効率化と意思決定精度向上を目指していきたいと考えています。
AIによる業務効率化と投資判断の質向上
三菱UFJ信託銀行のケースでは、「NEWS AI SEARCHER」により、情報収集から分析にかかる時間を大幅に短縮し、業務負荷を削減しました。また、システムによる高精度な情報抽出により、投資判断のスピードと精度が向上し、より適切な意思決定が可能になったことが特徴的です。今後もAI技術の活用を進め、投資判断の質をさらに向上させることで、競争優位性を維持・強化していくとともに、業務全体の効率化を推進していくことが期待されます。

三菱UFJ信託銀行
三菱UFJ信託銀行は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の主要な信託銀行であり、国内外で幅広い金融サービスを提供しています。特に、信託業務、資産運用、年金関連サービス、不動産関連業務などの分野に強みを持ち、個人から法人まで多様な顧客に対して専門的な金融商品やサービスを提供しています。また、資産管理・運用における高度なノウハウを活かし、国内外の投資家に向けたサービスを展開。信託業務の他にも、M&A関連や証券化などの法人向け金融業務にも力を入れています。国内外の規制に適応しながら、グローバルな視点で事業運営を行い、顧客満足度の向上と共に、安定的な成長を目指しています。